年齢を重ねると「なんだか体臭が変わったかも…」「加齢臭が気になる」と感じる人が増えてきます。若い頃にはなかった独特のにおいは、自分だけでなく周りの人にも不快感を与えてしまう場合があるため、気になり始めるととてもストレスになるものです。そもそも加齢臭とは何なのでしょうか? そして、いつ頃から始まるのか、原因は何にあるのかを探ってみましょう。
加齢臭とは
加齢臭(かれいしゅう)とは、中高年以降に特有の体臭のことを指します。若い頃からの汗や皮脂のにおいに加え、年齢を重ねたことで生じる特有の成分が原因となって放たれるにおいが「加齢臭」と呼ばれるのです。いわゆる「おじさん臭」「おばさん臭」と表現されることもありますが、実は男性だけでなく女性にも加齢臭は起こり得ます。
加齢臭は個人差が大きく、においの強さや出始める時期、感じ方もさまざまです。そのため、加齢臭が気になる人もいれば、ほとんど自覚がないまま過ごす人もいるでしょう。しかし、自分で気づきにくい分、周りには意外と「気になるにおい」として認識されていることもあります。対策をするうえでは、加齢臭の原因を正しく理解することが大切です。
加齢臭はいつ頃から始まるのか
「加齢臭は40代後半から始まる」「いや、50代がメインだ」といったさまざまな意見があります。実際は、加齢臭の原因物質が増加し始めるのは40代を過ぎてから、特に男性は40代後半〜50代にかけて、女性は閉経前後(50代前後)くらいから強くなるといわれています。しかし個人差が大きく、中には30代から感じ始める人も珍しくありません。
- 男性:40代後半〜50代くらいから顕著に
男性ホルモンの影響で皮脂腺が活発に働きやすく、加齢とともに過酸化脂質を含む皮脂分泌量が増加しやすい傾向があります。 - 女性:閉経前後(50代前後)が要注意
女性ホルモンが減少すると、皮脂腺の働き方が変わり皮脂の成分バランスが乱れやすくなり、加齢臭が強まるケースがあるのです。
もっとも重要なのは、「ある時期を境にいきなり出始める」というより、「徐々に加齢臭を生じやすい体質に変化していく」という点です。30代後半あたりから生活習慣次第で皮脂の酸化を促し、加齢臭を強める可能性があります。したがって、予防や対策はなるべく早い段階から始めるに越したことはありません。
加齢臭の原因となる物質「ノネナール」
加齢臭の独特のにおいをもたらすのが、「ノネナール」という物質です。ノネナールは皮脂腺から分泌される脂質が酸化・分解されることで生成される成分で、青臭さと油臭さが混ざったような特徴的なにおいを発します。
- 過酸化脂質の増加
加齢とともに体の抗酸化力が低下すると、皮脂中の脂質が酸化されやすくなります。過酸化脂質が増えるほど、ノネナールの生成量も増え、結果として加齢臭が強くなります。 - 皮脂量の増加またはバランスの乱れ
中高年になると、男性ホルモンや女性ホルモンのバランスが変化することで、皮脂の量や成分比率が変化し、加齢臭の原因になりやすい脂質が多く分泌されるようになると考えられています。 - 生活習慣の乱れ
不規則な食生活や飲酒、喫煙、運動不足、ストレスなどが重なると、代謝やホルモンバランスが乱れ、皮脂の酸化や過酸化脂質の増加を助長する場合があります。加齢臭だけでなく、他の体臭の原因にもつながります。
加齢臭を強める要因
加齢臭の大きな原因はノネナールですが、次のような要因が重なると体の酸化が進みやすく、加齢臭が強くなる傾向にあります。
(1) 油脂や糖質の過剰摂取
ハンバーガーやポテトチップス、スイーツなど、脂っこいものや甘いものを頻繁に食べると、血液中の脂質や糖分が増加して代謝しきれずに余ってしまい、結果的に過酸化脂質の生成を促してしまいます。
(2) アルコールの飲みすぎ
アルコールは肝臓で分解される際、多くのエネルギーと酵素を必要とします。飲みすぎると肝臓の負担が大きくなり、体内の抗酸化力が低下しやすくなります。さらに、アルコール自体の分解産物も体臭につながる場合があり、加齢臭を助長することも。
(3) 喫煙
タバコに含まれるニコチンやタールなどの有害物質は、活性酸素を増やす原因になるとされています。活性酸素が増えると体内の脂質が酸化しやすくなり、加齢臭を含むさまざまな体臭が強まるおそれがあります。
(4) ストレスや睡眠不足
ストレスや睡眠不足が続くと自律神経のバランスが崩れ、体内の代謝機能やホルモンバランスが乱れます。皮脂分泌が偏りやすくなり、加齢臭の原因物質が発生しやすくなるのです。
加齢臭を予防・軽減するポイント
加齢臭は「年齢を重ねると必ず強くなるもの」ではありません。生活習慣やケア次第で、においを抑えることが十分可能です。以下のポイントを取り入れてみましょう。
(1) バランスの良い食生活
野菜や果物、魚、大豆製品など、抗酸化物質や良質なたんぱく質が豊富な食材を意識して摂ることが大切です。特にビタミンCやビタミンE、ポリフェノールなどは抗酸化作用が期待できるため、皮脂の酸化を抑える効果が期待できます。
(2) 適度な運動と十分な睡眠
定期的な運動は血行を促進し、代謝や老廃物の排出をスムーズにします。また、しっかりと睡眠をとることで体が回復し、自律神経やホルモンバランスが整いやすくなります。こうした習慣が体の抗酸化力を高め、加齢臭の原因物質の発生を抑える助けになります。
(3) 正しい入浴や洗い方
加齢臭を放つノネナールは皮脂腺が多い背中や首の後ろ、耳の後ろ、頭皮などに集中しがちです。これらの部位を入念に洗うことがポイント。ただし、ゴシゴシ洗いすぎると皮膚を傷め、逆に皮脂分泌を活発にさせてしまうこともあるため、ほどよい力加減で丁寧に洗いましょう。
(4) 衣類や寝具の清潔を保つ
衣類や寝具には皮脂や汗が蓄積しやすいため、雑菌繁殖の温床となり、より強いにおいを発することがあります。特に首元や枕カバー、シーツなどはこまめに洗濯し、清潔な状態を保つように心がけましょう。
(5) 消臭グッズ・専用ケア製品の活用
最近は加齢臭対策のための石鹸やボディソープ、デオドラント製品などが多く発売されています。これらを上手に利用して、加齢臭の原因物質を洗い流したり、抑えたりすると効果が高まります。
まとめ
加齢臭が始まる時期には個人差があるものの、一般的には40代後半から50代にかけて、男女ともに徐々に増えていく傾向があります。原因は皮脂の酸化によって生まれる「ノネナール」という物質で、これが独特のにおいを放ちます。加齢によるホルモンバランスの変化や抗酸化力の低下、生活習慣の乱れが重なれば重なるほど加齢臭が強まる可能性が高くなるのです。
しかし、年齢を重ねること自体が悪いわけではありません。食生活の見直しや適度な運動、十分な睡眠、そしてストレスのコントロールなど、日々の習慣を少しずつ改善していくことで、加齢臭を予防・軽減することは可能です。さらに、専用のケア製品や正しい洗い方を取り入れることで、においを最低限にとどめることもできます。
加齢臭は、誰しもが持ち得る自然な体臭の一種です。だからこそ、「もう年だから仕方ない」と諦めるのではなく、「少しの心がけとケアで変わるかもしれない」と前向きに捉えてみましょう。自分の体を労わり、健やかな生活を送るために、加齢臭対策を取り入れてみることをおすすめします。
(※本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療行為や診断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は専門の医療機関へご相談ください。)